7.28.2017

第91回(15時30分開始です)


叙述態研(きむすぽ)の皆さま

 

すっかりご無沙汰しております。皆さまもお変わりないことと存じます。

 

さて、昨年12月の会からまた間が空いてしまいましたが、来る84日(金)に2017年度最初のきむすぽを開催できる運びとなりました。

今回は特別企画となり、ポスターでは「国際研究集会」というやや固い名称になっていますが、ぜひ普段どおり気軽にご参加いただければと思います。

またご関心がありそうなお知り合いなどいらっしゃいましたら、ぜひお誘いあわせの上、お越しください。

 


 

91回 叙述態研

日時:84日(金)1530分から

場所:国立オリンピック記念青少年総合センター センター棟510

 

【個人発表】

ジャック・ウィルソン 「不安の系譜:戦後歴史学と戦後詩の立場から」

田口 麻奈 「鮎川信夫「橋上の人」と近代主義の帰趨」

フラボスキ-・ドーラ 「比較文学的視点から見た戦後詩:ハンガリーにおける「荒地」研究の意義について」

ゲストコメンテーター:樋口良澄
------------------------------

【発表要旨】
ジャック・ウィルソン「不安の系譜:戦後歴史学と戦後詩からの立場」

この発表は荒地という戦後詩人のグループと謂わゆる歴史意識の問題に取り組む。特に、鮎川信夫 (1920-1986)が戦後時代に出版した「荒地における主題」や「現代詩とは何か」や「灰燼の中から」などの評論を読み、荒地派の戦争ファシズムと戦後コミュニズムへの反対というスローガンと知識人の戦争体験に繋げる。荒地派と知識人の歴史を分析することで、死や時間性などのテーマと世界的な全体主義の批判との関係を強調する。その 立場から、荒地派を日本敗戦の喪失者として解釈するだけではなく、第一次大戦から第二次大戦後に亘る世界近代性に対するユニークな批評家として把握する 。


田口麻奈「鮎川信夫『橋上の人』と近代主義の帰趨」
 
鮎川信夫の代表作「橋上の人」(19431951)は、戦中から戦後にかけて幾度も改稿を重ねて書き継がれた詩篇であり、これまで、終戦を挟んだ鮎川の心境の変化を軸に読まれてきた。本発表では、詩篇が包含している同時代的な課題を読み取ることを主眼とし、最終稿となった第三作目(1951)を中心に考察する。当時の重要な潮流の一つであるTS
エリオットブーム、それをふまえた詩劇の流行を考え合わせることで、本作における多声性の試みを具体的に検証したい。また、本作には鮎川による都市論としての性格が認められ、大きくは近代日本の都市計画に対する批評性を読み取ることができると考えている。1950年代に多くの批評家が示した近代主義批判の動向にも議論を広げつつ、日本戦後詩における近代主義の帰趨について考える端緒としたい。
 
 
フラボスキー・ドーラ「比較文学的視点から見た戦後詩:ハンガリーにおける「荒地」研究の意義について」
 戦争が終わったあとの数年間は、詩の世界においても混乱の時期だった。西洋の文学作品でもこれは同じで戦後の混乱が強く感じられていると言われている。それまで文学的だと言われた言葉は戦争体験を表現するのには不十分であり、審美的にも有効ではないという考え方が広がっていた。一方、敗戦によりその戦争協力の反省に基づき日本の「戦後詩」が始まった。また一方、ハンガリーはハンガリー人民共和国として1949年から1989年までの社会主義政権時代に入った。ソビエト連邦の影響下に置かれた国となっており、それから「ハンガリー戦後詩」のような存在であった作品が禁じられた。戦前の詩の流れが戦後どのように受け継がれていたのかについて比較文学的視点から考えてみたいと思う。「荒地」グループの詩人による運動、そしてその作品を,戦後のハンガリー詩と比較しながら、日本の戦後詩の文学史的特徴を明らかにしようと思っている。
 
 

 

0 件のコメント:

コメントを投稿