10.05.2012

第67回


日時:10月5日(金)
【個人発表】
野崎有以「吉行淳之介と高度経済成長期の「家庭」」
 本発表では、「第三の新人」の一人として知られる吉行淳之介の著した作品について、「家庭」というテーマに着目しながら検討していきたいと考えております。それにあたって、吉行が多くの作品を著した時期である高度経済成長期の家庭についても考察していきたいと思います。高度経済成長期における家庭はどのようなものだったのか、あるいはどのような家庭が望ましいとされていたのかということについては、当時の教育政策や家政学系の雑誌でなされた議論をもとに検討したいと考えております。吉行淳之介の作品は、いままで「性」の観点から研究されることが多かったと考えられます。しかし、本発表では、「性」ではなく、吉行にとっての「家庭」や「家族観」はどのようなものであったのか、
またそれが戦後や高度経済成長期においてどのような意味を持ったのかということを掘り下げて行きたいと考えています。
 どうぞよろしくお願い申し上げます。

【参考文献】
本発表で主に用いる吉行の作品は以下の2つです。
『砂の上の植物群』(初出:『文学界』昭和38年1月号〜12月号)※1
『暗室』(初出:『群像』昭和44年1月号〜12月号)※2

※1新潮文庫から刊行。
※2講談社文芸文庫から刊行。
【著者セッション】

葉名尻竜一『コレクション日本歌人選 寺山修司』(笠間書院、2012年)
コメンテーター:桑原茂夫 司会:田口麻奈

『コレクション日本歌人選 寺山修司』(2012・2・29、笠間書院)

 代表的な短歌一首ごとに鑑賞・解説を施し、合計三十九首で一冊の入門書になるように編みました。辞典のようにどこからでも読み始められますが、それでも通読したときには、一つの〈像〉を結ぶように配慮したつもりです。なかには目にすることの少ない短歌も含まれておりますが、選歌もその方針にそって独自に行いました。
 そのため、書き進める作業で浮かんできた疑問や問題意識で、この〈像〉の枝葉に当たるようなことは、一旦脇に置かざるを得ませんでした。
 今回はその疑問を、研究発表の形式に整えて、報告致します。一つのネガから、別のプリントを焼き直したと考えていただければ、と思います。
 タイトルは「歌人・寺山修司の〈隣人〉」です。
 近年、生地・青森を中心に、実証的な資料調査が積み重ねられております。それでも、まだ確認できないことは多く、本人自らが、職業は「寺山修司」と宣言していたように、寺山には自己の履歴をパフォーマティブに語るところがあります。報告はその点に絞って行います。
 また、書評を担当していただく詩人の桑原茂夫さんは、ながらく『現代詩手帖』の編集にも関わっておられた編集者であり、現在、出版社「カマル社」の代表です。
 寺山だけでなく、寺山を見出した中井英夫さんとも、ライバルと目されていた唐十郎さんとも深いお付き合いのある方です。
 今回は書評の枠をいったん取り払って、寺山とその同時代人の実像を語っていただこうと考えております。

文責・葉名尻竜一