6.05.2009

第43回


日時:6月5日(金)17:00〜
場所:国立オリンピック記念青少年総合センター棟302
発表者:内田力
「網野善彦『無縁・公界・楽』における機能への注目」
コメンテーター:上村忠男

【発表要旨】
網野善彦は1953年夏に左翼政治運動から離脱したことを「戦後歴史学からおちこぼれた」と表現していた。実際、1953年以降の網野は同時代の歴史学がもつ暗黙の価値判断を共有しないで歴史研究をしようとしていた。本発表が示すのは、『無縁・公界・楽』(1978年出版)がその必要から歴史的事象の機能に注目して歴史叙述をおこなったということである。本書で網野は、事象それ自体よりも、事象がもつ「(世俗からの)縁切り」という機能に注目して叙述した。この方法により、たとえば「無縁」のように史料上は否定的文脈で現れる語を肯定的に評価してみせた。しかし、そのような叙述法が理解されなかったことで、議論のかみ合わない論争が歴史学界におきたのである。