12.07.2007

第33回


発表者:スエナガ・エウニセ「狭衣の母ー『狭衣物語』の堀川上の影なる努力」
[個人発表]
発表者:柳周希「夢浮橋巻の横川僧都の消息文の解釈をめぐって」

スエナガ・エウニセ「狭衣の母ー『狭衣物語』の堀川上の影なる努力」
『狭衣物語』では、狭衣の母堀川上は常に子の望みを叶えることを願う母、そして子の視点からいつまでも若くて美しい天女的な女性として描かれる。これは、この世のヒエラルキーを重視し、現世離脱願望の強い子をこの世に位置づけよう、結婚を強制しようとする父と対照的である。本発表では、どのような場面で堀川上が子から理想的な女性として見られるのかを考察し、狭衣は理想的な母を幻想しているのではないかと指摘する。 狭衣はまた、実の兄妹として育てられた母の姪である源氏宮を理想的な女性と崇め、しばしば源氏宮と母を同一視している。源氏宮思慕の裏に母恋の感情が潜んでいるということはすでに指摘されている。本論では、狭衣、源氏宮、堀川上が登場する場面を考察し、狭衣と源氏宮や狭衣と堀川上の特異な関係が形成されるに至ったのは堀川上に一因あることを指摘する。堀川上は優れた息子や養女と三者の理想的な関係を築き、息子を溺愛することで、息子を自分のもとにとどめておこう、現世離脱願望を忘れさせようとしているのではないかと論じる。


柳周希「夢浮橋巻の横川僧都の消息文の解釈をめぐって」
宇治十帖の最後の巻である夢浮橋巻は、浮舟の救済や薫の愛執の問題などさまざまな論議をよんでいます。その中心となる問題の一つは、薫のもとめによって、横川の僧都が浮舟に
あてて書いた手紙の解釈です。この手紙は、浮舟に対し還俗をすすめるものとする論と、一方では、還俗を横川の僧都がすすめることはありえないとする論があります。本発表では、非還 俗説の立場から考えてみたいと思います。